19年度は、研究計画にしたがい、文献資料の収集のほか、国内調査、そして中国において「黒戸口(無戸籍者)」に関する予備調査を行った。 1.文献資料については、本研究課題のテーマである「移動する人々」に関しては、先行研究など蓄積があることからある程度収集することができたが、本研究の他の重要なキーワードである、「パスポート」や「無国籍者」については、先行研究の蓄積が少なく文献資料も稀であった。よって、これらに関しては、各政府、研究機関の報告書などの収集に努め、場合によっては、政府担当者と個人的に連絡をとり、資料を提供していただいた。資料については、整理をおこないリスト化に努めている。 2.文献資料の少ない無国籍者に関しては、複数回に分けて国内調査を実施し、インタビュー調査および情報収集を行った。19年度は、東海地方の住む在日ブラジル人コミュニティーを訪問したほか、特に新宿大久保に住む無国籍者に注目し調査を行った。なお、国内調査の結果については、あとの研究成果にも挙げるように、図書の一章分として5月末に出版される予定である。 3.海外調査として、中国の黒龍江省及び海南島を訪問し、「黒戸口」に関する予備調査を行った。中国の戸籍法を収集したほか、「一人っ子政策」の影響で戸籍がないままでいる人に関する情報収集を行った。予備調査の印象としては、本問題は極めて難しい問題であるうえ、中国国内の事情もあり、調査方法・情報収集においては、細心の注意と工夫が必要である。こうしたことも念頭に置きつつ、20年度の調査では、中国国内の研究者などの協力を依頼し研究を進める予定である。
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