2009年度も前年度に引き続き、パプアニューギニア(PNG)で森林開発を行うマレーシア華人の活動とネットワークに関する調査・研究を行った。具体的な研究内容は、1.国内での文献調査、2.国外での現地調査、3.国内・国外での研究発表、である。1.に関してはオセアニア地域における天然資源の開発に、海外企業、特に東・東南アジアの華人系資本がいかにして関わっているのかに関する先行研究の収集・整理を行った。その結果、PNGに限らず、オセアニア各地では現在、マレーシア系以外にも、中華人民共和国系の企業や労働者の流入が顕著になっており、それが現地社会との間で様々なコンフリクトを引き起こしていることが明らかになった。そのためPNGの事例をオセアニアの他地域の事例と比較し、より広い社会的背景の中で理解する必要性が明らかになった。2.に関しては、2009年8月から9月にかけてマレーシアを、および2010年3月にPNGを訪問し、現地の大学や研究機関、新聞社での資料収集および華人コミュニティを対象としたフィールドワークを実施した。マレーシアではクアラルンプール、クチン、ミリといった都市を訪問し、華人と先住民との相互関係や、林業企業の活動に関する調査を行った。PNGではポートモレスビーの華人コミュニティを対象とした調査を行った。またポートモレスビーでは日刊紙The Nationalの本社を訪問し、編集者へのインタビューおよび資料室での新聞切り抜き資料の収集を行った。3.に関しては2009年7月に台湾で開催された国際東アジア人類学会、8月に韓国で開催された国際アジア研究者会議、11月に大阪で開催された日本華僑華人学会の研究大会に参加し、研究発表をすることにより研究成果を公表した。また上記の学会で国内外の研究者と交流するとともに、今年度より参加することとなった日本貿易振興会アジア経済研究所の共同研究会で、他の共同研究員と意見交換をした。
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