本研究は、現行少年法や児童福祉法などの未成年者関連諸法の前提となる、明治40年刑法(現行刑法)における未成年者に関する規定の意義、そして大正期に制定された少年法の制定過程を分析することを通じて、近代日本における未成年者に対する刑事法の理念と実態の解明と、今後の未成年者処遇を検討する上での素材を提供することを目的としたものであり、明治期における未成年者処遇法の考察を行った『近代日本の未成年者処遇制度-感化法が目指したもの-』大阪大学出版会(2005)を発展させたものである。 そして本研究においては、明治後期および大正期に発表された現行刑法に関するテキスト、未成年犯罪者および不良少年に関する司法省・内務省・民間有志者の活動の分析を通じて、(1) 明治中期の段階で既に行われ始めていた未成年犯罪者および不良少年の処遇に関する民間の活動と国家による活動の、明治後期および大正期における変容、(2) 当該変容と現行刑法制定における未成年者に関する規定の関係性、そして(3) 近代日本の未成年者処遇における大正少年法の意義と問題点を明らかにした。
|