本研究は、自由、平等、徳などの共和主義的法理念を再構成することを目的とするが、本年度は4カ年計画のうち3年目に当たる。今年度までの研究では「自由」の観念を主軸にして、とくに「徳」とのの関係に焦点を当てながら、共和主義の解釈理論がどのような含意を持つのかを明らかにしてきた。今年度の研究は、従来の研究をさらに発展させ、「平等(正義)」との関連も視野に入れつつ、「徳」と「自由」との内在的関係をやや法思想史的見地から検討することを計画していた。以上の構想を実施するに当たり、以下の研究作業に当たった。 まず昨年度公表した「マキァヴェッリは背徳の徒に微笑むか」の後半部分の執筆のために、マキァヴェッリ政治理論の母体となったイタリア・フィレンツェに赴き、マキァヴェッリ自身が執筆したテキストとそれらに影響を与え、逆に影響を与えられた様々な文献を収集して、講読の上検討を加えた。それらの作業を元にして、論文の前半部分で説明したマウリツィオ・ヴィロリの共和主義的徳解釈を、マキァヴェッリとその他の論者のテキストに照らして批判的に検討し、論文の後半部分を執筆した。文献の検討に相当の労力がかかったため、この作業に予定よりも時間をかけてしまったが、これについては引き続き推敲を加えたうえで、来年度早々に公表する予定である。 また以上の作業と並行して、ヴィロリと同じ共和主義の立場に立つキャス・サンスティーン教授の「共和主義の復活を超えて」を翻訳し、また共同執筆の教科書の中で、法の支配に対するデモクラシー論からの批判と、民主主義と共和主義の関係をめぐるコラムを担当し執筆した。残念ながら今年度には刊行されなかったが、来年度中には公表されることが期待される。
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