本年度は、当初予定していた2つの調査研究のうち、調査研究実施の上での調査対象者との日程調整等の都合を主たる理由として、(1)定期金賠償(いわゆる「命日払い」)が問題とされた民事訴訟事例の比較調査研究に重点を絞って行った。比較調査には、当初の予定を一部変更して3つの訴訟事例を取り上げ、それぞれ、千葉、岩手、大阪の各地に在住する訴訟の原告当事者(遺族)及び原告代理人弁護士、相手方(被告)代理人弁護士を対象に、計7回の聞き取り調査を行った。 聞き取り調査並びに判決文を中心とする訴訟資料ないし関連文献資料等の分析・検討を通して、人命の喪失を伴う紛争事例において定期金賠償(命日払い)方式が選択される際に当事者が「法に対して寄せる期待」と、訴訟に関わる法実務家(裁判官・弁護士)並びに判例評釈・研究論文等を通して同種事例を研究対象とする法研究者が理解する「法の機能・役割」との間に、大きな「隔たり・ズレ」が存在することを、かなり明確な形で明らかにすることができた。こうした「隔たり・ズレ」を法社会学の学問的視点からどのように理論的に位置づけ、裁判・弁護実務ないし法解釈学に対してどのような実践的提言を行うか、これらを更なる文献調査・検討に基づいてより精緻に究明し一定の成果として公表することを、次年度の継続課題としたい(なお、この定期金賠償が問題とされた訴訟事例に関する研究の成果は、2008年5月に神戸大学において開催予定の日本法社会学会・2008年度学術大会において研究報告の予定である)。 また、もう一つの調査研究である(2)学校死亡事故をめぐる二つの具体的な民事訴訟事例の比較検討、については次年度、重点的に調査を進めて行く予定である。<以上>
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