(1) 本研究課題の目的 本研究は、日本中世における紛争解決の過程において、裁判権力が「濫訴」として排除していた訴訟事例について実証的かつ多角的な検討を加え、当該期の裁判権力および社会の特徴について明らかにすることを目的としている。 本研究では、これまで研究の手薄であった「濫訴」に関する研究をさらに深化させるものである。とりわけ、「裁判の判決(裁許状)」だけではなく、「訴訟当事者の提出文書」を含めた訴訟資料全般を検討対象とする。さらに、裁判担当者から「濫訴」とは認定されなかったものの「濫訴」類似の訴訟事例全般についても再検討を加えていく。そして、判決の導出のなかで「濫訴」という言葉を使って排除されていた事例を整理・検討し、訴訟制度全体のなかで定位することを目指す。 また、裁判によって「濫訴」と判断される背景には、「裁判権力側による何らかの思惑」・「社会情勢」が影響を与えていた側面があったと推察できるので、あわせて検討していきたい。 (2) 本研究課題の内容 本応募課題は、以下の細分化した3つのテーマに沿って期間を区切り、段階的に目標を達成していく計画手法をとっている。 (1) 当事者提出文書における「濫訴」言及事例の検討(平成19年度・平成20年度前期) (2) 日本中世の訴訟制度における「濫訴」の概念整理(平成20年度後期・平成21年度) (3) 日本中世の紛争処理における「濫訴」の定位(平成22年度)
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