鎌倉幕府は、法制定段階では様々な手段を講じて威嚇効果的に「濫訴」防止を企図しながらも、運用段階ではごく一部の悪質性の高い「濫訴」を除き積極的な制裁を科すまでには至っていなかった。本研究はこれまでの中世法・中世裁判権力研究の成果をトレースし補強したものと位置づけられるが、「濫訴」の分析という幕府権力の検討を行う新たな視点が提供できた。「濫訴」を介した研究のさらなる深化は可能であると考える。また、検討対象が鎌倉幕府裁判に終始しており、室町期をほとんど対象とできなかった。反省すべき点であり今後の課題としたい。
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