4年間の研究期間の初年度にあたる平成19年度は、第一に19世紀ドイツ憲法学の抱えていた解釈論的諸問題の構造について基本的な理解を獲得することに取り組んだ。具体的には、戦前の美濃部達吉の著作を入口としながら、彼が依拠したドイツ立憲君主制下の後期における憲法学の問題状況について、イェリネックやラーバント、ゲオルク・マイヤーなどを素材に検討を進めた。第二に、カイザーライヒ・ワイマール・戦後におけるドイツ憲法学の変化を考える際の切り口のひとつとしてそこにおけるドイツ憲法史像の理解やその際の方法意識の変化をひとつの切り口として分析するべく試み、かような検討の手始めとして19世紀ドイツ立憲君主制に対する戦後の議論に取り組んだ。具体的には、同じくカール・シュミットの影響が指摘されるベッケンフェルデとフーバーという世代を異にする論者の論争を検討の対象とし、そこにおける分析枠組みの相違が持つ意義について考察を試みた。これらの検討は今後も角度を変えながら継続される予定であり、次年度以降に発表される研究論文の中に反映される見通しである。この年度内に公表された成果としては、まず本研究の主題に対して現時点で抱いている理解を、議会制論を主題とした論文の中で試論的に提示した。また、憲法における団体の位置づけに関する論文を執筆するに際して、戦後ドイツ憲法学の性格に関する現時点での理解を部分的なかたちながら提示するよう試みた。こめ他、次年度以降の研究のたあに文献収集を積極的に行った。
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