本年度の研究においては、ドイツの排水賦課金という手法が、水質保全政策において必要になった背景にはいかなる事情が存したかを明らかにすることを、主な課題としてきた。 そこから明らかになった主要な事項としては、ドイツでは、排水賦課金制度の法制化に至るまでの議論、および、排水賦課金制度の実践を通じて、「規制的手法と経済的手法の混合戦略」という環境政策上の新たなコンセプト形成されてきた、ということが挙げられる。それによると、環境賦課金という手法は、全体としての環境政策の中でそれ自体独立して存在するのではなく、伝統的な規制的手法に内在される限界や欠陥、すなわち、とりわけ「執行の欠缺」という直接型規制の機能不全を補うための補完的手法としての位置づけを与えられようとしてきた、というものである。 このような環境賦課金という環境保全手法の方向性は、環境行政の今後のあり方をうらない、したがってまた、この分野における規制行政の新たな可能性を探るうえで、環境法にとってはもちろんのこと、行政法および行政法学への示唆に富むものといいうる。 本年度の研究では、ドイツおよびわが国の環境法・行政法関係文献を対象とした調査・研究を実施することができたが、他方で、研究成果の公表にはまだ至っていない。そこで、次年度も研究を継続し、排水賦課金という手法と水管理法上の規制的手法という2つの手法の位置づけ・機能を明らかにすることにより、環境保全の法的手法のあるべき方向性を模索し、そこでの成果を論文等の執筆を通じて公表することとしたい。
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