本年度は、日本における税制改革の特徴を跡付けるべく、交付された研究費でいくつかの日本の税制改革に関する資料を購入し、読了した。日本の税制改革については、経済社会の変化に伴い、特に所得税制の改正が行われ、さらに行われるべき点がある。注目すべきは年金税制、各種所得類型の改革である。また、以上の作業と並行し、同じようにドイツ租税法の文献についても収集し、読了した。法人税の基礎理論に関する書物により、特に近時のドイツの税制改革に関する動向を追ったが、法人税負担の軽減の拡充、その反対に組織変更税制に関して損失利用の制限立法が行われた。しかし例えば連結申告面ではEU法の影響により、その適用範囲を国際的に拡大することが判例・学説により主張されている。連結申告の国際的拡充はドイツに税収喪失の可能性をもたらすが、その対応策の構築が必要である。またドイツの企業課税の特徴である法人税・所得税の二元主義は実定法上なお克服されないが、学説においては法人・人的会社といった法形態が担税力の適切な指標とは必ずしも言えないという主張が私法上も租税法上も明確になっている。なお、政策税制の構築および、その中での担税力概念の研究として、環境税の法構造に関する研究論文を公刊した。 次年度(平成20年度)はドイツの近時の税制改革の成果を織り込んだドイツ租税法のスタンダードともいえる教科書が公刊されるので、それを読了し、ドイツ税制改革論の法構造の明確化に努めたいと考える。
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