本年度は、研究課題に関する邦語・欧米語の文献の収集に努めるとともに、現代フランス憲法学基礎理論の分野における代表的論者であるミシェル・トロペール(パリ第十大学名誉教授)の重要な論文を3本翻訳することができた(「法政研究」74巻1号および4号に掲載済み)のは、大きな研究成果の一つである。また、現在、同氏の著書「法哲学」の邦語訳を準備中である。 さらに、憲法の解釈とはなにか、そしてそもそも憲法とはなにか、という、本研究に通底する根本的な問いついて、フランス法理論を参照した研究の成果として、「『憲法』の概念-それを考えることの意味」と題する論文を、長谷部恭男編『岩波講座憲法6/憲法と時間』(岩波書店、2007年5月刊)に掲載することができた。また、同論文で展開した基礎理論的な考え方を、具体的事例にあてはめて考察した研究の成果として、内閣法制局の集団的自衛権に関する解釈の変更可能性について論じた「憲法解釈の変更可能性について」と題する論文を、雑誌「法学教室」330号に掲載することもできた。同論文は、同誌の連載「日本国憲法60年記念」の最終回論文であった。 2007年6月には、アテネで開催された国際憲法学会世界大会に出席し、主としてフランス語圏からの出席者と活発な意見交換を行った。 また、2008年3月には九州大学で「第8回日仏公法セミナー」を開催し、フランス人10名、日本人20名の参加を得た。その間、一部のセッションで座長を務めるなどして、積極的に研究討論に参加した。次年度以降の研究に活かす予定である。
|