本研究は、手数料や負担金等の、広義の公課と政策実現のための法制度との関係を明らかにしようとするものである。研究計画(2年間)初年度にあたる本年は、その予備的考察と位置付けられる、大枠の概念(財政と予算)に関する考察を行い、研究論文として年度内に公表した。 実務においても利用しうる理論構築を目指す本研究は、その前提としてドイツとの比較研究を組み合わせることとなっている。その理由は、日本における旧来の実務やそれらが参照した伝統的な行政法理論が、その基盤としてドイツ法に依拠してきたためである。そこで本年はドイツにおいて財政(Finanz)という用語が広狭二義に用いられてきたこと、狭義の財政は歳入面で、予算は歳出面で、それぞれ広義の財政全体を規律する関係にあることを明らかにした。そしてこのような概念の明確化が日本における概念整理にも資することを近隣領域(財政学など)の理論も参照しつつ明らかにした。 また本研究の問題関心となる、公課を用いた政策の実現手段の可能性という観点から、その源流となる予算の機能変遷を明らかにした。議会と行政(官僚)における予算権限の所在と関連して、上記のような政策実現手段としての機能を発揮する素地が形成された点を明らかにした。このことは今後の制度設計においても、有効な政策実現手段を形成するためには、いかなる主体が財政全体のコントロール権限を分有すべきか、そして予算の策定・決定にはいかなる主体がいかなる形で関与すべきか、という現代的な論点に関する基礎情報ともなりうる。
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