本研究は、手数料や負担金等の、広義の公課と政策実現のための法制度との関係を明らかにしようとしたものである。研究計画2年目(最終年)の本年は、昨年度公表した理論面での研究成果を踏まえ、主として実務的側面の考察を行った(研究成果としての原稿は既に完成の上、出版社に入稿済で、本年中に出版予定である)。 今回明らかにした点の一つは、民事手続をも含めた(広義の)公課の強制徴収に関する仕組みと、近時の運用状況についてである。地方公共団体レベルでは、一部事務組合や広域連合による方式、税の徴収に特化した事務所の設置などが注目に値する。これらの工夫による公課の徴収体制の確立は、迅速かつ確実な政策実施体制の構築へとつながるものである(以上は研究成果の第5章「政策実施手続」)。加えて、予算・会計制度の変革が公法学上の諸制度に大きな影響を与える可能性について明らかにした。従来は十分でなかった財政分野での情報公開については、この改善が公課制度の検証及び改善につながるものである点などを指摘した。特に、地方公共団体財政健全化法は重要な役割を担うこととなる。直接的には地方公共団体の赤字を削減することが目的であるが、そのことはひいては財政作用に対する納税者の信頼性を向上させ、地方公共団体による各種制度設計のアカウンタビリティの確保にも大きく貢献することになる(以上は研究成果の第6章「政策と予算」)。 手数料、負担金を含む広義の公課制度は、行政の内部的な会計技術の問題を越えて、政策過程への参加など公法学上の重要論点と直結するものであるという構造を本研究は明らかにした。
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