研究概要 |
本研究は、国際司法裁判における判決鼓研究の終結点を構成ずるもめであり、これまで行つてきた国際裁判研究(権限鍮越論、判決再審手続、判決解釈手続)を総括するという点で極めて重要な位置を占める。また、本研究を通じて、国際裁判機能論の研究手法あるいは議論の前提に関して重要な視点を得ることができた。その成果は次の点にまとめることができる。 1.国際法学会(2007年5月12日)において「国際裁判における既判力原則」と題する報告を行い、既判力原則に関する総論的な分析をまとめた。具体的には、判決の拘束力,終結性、不服申立手続、権限踰越といった概念の関係を整理し、既判力原則の法的定義を提示した。特に、2007年に国際司法裁判所の下したジェノサイド条約適用事件を中心に分析を行った。また、報告後はその内容を理論的に掘り下げ、国際裁判における判決の終結性と内容的妥当性の関連性の問題として再構成した。その成果は、学会誌・国際法外交雑誌に掲載され、2008年1月に発行されている(研究発表参照)。 2.既判力研究の一環として、国際判例研究を行い (ICJのパルプ工場事件・仮保全措置命令)、また、不服申立に関する著作に関して書評を執筆した。 3.研究計画に従い、夏季休暇を利用してベルギー・ブリニッセル自由大学に客員研究員として滞在した。この間、資料収集を行うと同時に、既判力概念および国際裁判の機能に関して現地教授陣と詳細な議論を行い、多くの示唆とアドバイスを受けた。その成果は、上記の学会誌論文に反映されている。 4.以上の研究の結果として、国際裁判所が決断主義的で権威主義的な正当化を行う場合があることが明らかになった。また、「最早問い直し得ない」という終結性の原理を強調した正当性の主張には、矛盾と限界があることが明らかになった。以上の成果に基づき、判決の正当性を担保する原理として、終結性原理に代わる根拠を見出すことが次の課題として明らかになった。そこで、次年度は、国際裁判における判決理由の記載を巡る諸問題について研究を続ける予定である。
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