平成21年度においては、法人の「属地性」の概念の理論的な位置づけについて、継続して分析することによって、本研究の当初の目的である法例の起草者の依拠した法人論の理論的パラダイムを完全に明らかにするには至らなかったものの、その理解のために必要となる前提的要素を、明らかにした。 具体的には、まず、我が国の国際私法学の基礎となったヨーロッパ国際私法学における学説・理論体系の検討を行った。この点、特にLaurentの思考を取り上げ、その理論体系全体の観点から分析を行った。また、他の分野・法律問題における「属地性」について、通貨の強制通用力に関する法規の分析を中心として、検討を進めた。これは、他分野における「属地性」と法人の「属地性」を比較対照して、法人の「属地性」の概念を明確化するためである。さらに、法人の「属地性」に基づく思考パラダイムから法人の「属人性」という現在一般的な思考パラダイムに至る理論的過程の分析を行った。これらの分析を行うことで、過去の学説の理解として、法人制度に関する法律の強行性等に鑑み、理論的に属地法の適用が合理的であるとする思考が取られていたと解することが合理的であることの論証を行い、また、当該思考パラダイムからの理論的・歴史的展開を理解する上で、法人の認許の制度が果たした意義について、一定程度、明らかとした。 ただし、具体的な成果として、平成21年度においては、本研究に関する論文の公表・学会発表等を行うことはできなかった。しかし、既に執筆を行った本研究に関する論文については、平成22年度において公表する予定である。
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