わが国において外国判決に関する執行債務者にはいかなる異議申立方法が認められるのか、異議を認めた判断にはどのような効力が与えられるかという問題につき、今年度は交付申請書の予定に基づき、(1)わが国執行法制度下で可能とされる執行債務者の異議申立手段の整理、および(2)異議申立方法の内容・異議判断の効果についての比較法的調査を行った。具体的には、(1)の国内法の議論を整理する前提として、また(2)の比較法的調査のひとつとして、ドイツにおける学説・判例状況の整理を進めた。 検討の結果、ドイツにおいては、a)外国判決に対する異議申立に関しては、遮断効の問題、遮断されない事実の判断についての管轄や準拠法の問題について、それぞれ議論があること、b)そこでは「外国第一判決」に対する「内国第二判決(請求異議訴訟、執行判決請求訴訟、給付を求める訴え等)」における異議申立といった単純な構図ではなく、「内国第二判決」さらには「外国第二判決」に対する、請求異議等における異議申立までも視野に入れたかたちでも議論が展開されていることを明らかにした。 特にb)の点の議論が日本とは異なり非常に込み入っていることもあり、分析するのに手間取った。そのため、ドイツの議論状況で得た視点からわが国執行制度の異議申立手段の整理に問題状況を整理する、という段階には踏み込むことができなかった。次年度はこの点から着手し、比較法的観点からの検討も加え、あるべき異議申し立て方法および内容について私見をまとめることとする。
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