わが国において外国判決に関する執行債務者にはいかなる異議申立方法が認められるのか、異議を認めた判断にはどのような効力が与えられるかという問題につき、今年度は交付申請書記載の予定に従い、まず、(1)わが国執行制度の下で可能とされる執行債務者の異議申立手段の整理を行った。 すなわち、前年度ドイツにおける議論から抽出した視点を基礎として、A)執行債務者が執行債権者に対して取りうるアクションについて、執行判決前・執行判決訴訟中・執行判決後の段階に分け、それぞれの場合わが国現行法制上とりうる手続(条文)、さらに管轄や訴えの性質について現在の議論からは条文上・解釈上想定される問題について検討した。その上でB)各手続における異議判断の準拠法およびC)異議について下された判断の拘束力について整理した。これらの検討の結果、わが国では執行判決訴訟(民執法24条)や債務名義や執行文をめぐる債務者救済手続の法的性質・判断の効力について不明確な部分があり、これらが相互に関連しあうA)〜C)各段階の議論が複雑になっていること、それゆえ国内外で第一訴訟・第二訴訟や外国判決をめぐる執行関係手続が内外国で連続して起こったような事例には、適切に対応しきれない恐れがあることを明らかにした。 その後これらの分析をもとに、(2)あるべき異議申立方法および内容についての立法論的検討を、ドイツにおける議論を参考に進めてきた。現在なおその作業を継続中である。
|