研究概要 |
本年度は、事業者の自主的な事業判断に基づく行為(単独行為)に対して競争の観点から行う規制は、歴史的に如何なる理論的基盤の上に成り立っているのか、という研究目的の下で、アメリカ法の歴史的展開に絞って研究した。具体的には、並行的に排他条件付取引(単独行為の一つ)が実施されることに伴う排除・市場閉鎖の弊害を正面から扱い、クレイトン法3条(アメリカ反トラスト法において、日本独禁法の不公正な取引方法のうち一般指定10項、11項、13項等にほぼ対応する)の弊害要件の解釈をめぐって各意見の間に先鋭な対抗関係を見出すことができる、Standard Oil Co. of California and Standard Stations, Inc. v. United States, 337 U. S. 293(1949)を基点として、アメリカ法の歴史的展開をより詳しく検討した。検討の結果、同判決は現在のアメリカ法において活ける法としての地位をほぼ失っているが、テクストを再読し、アメリカ判例法史上に適切に位置づければ、本研究の課題について未だ重要な視点を提供してくれることが明らかとなった。 本課題については昨年までに研究に着手し、昨年中にその成果を法学協会雑誌に公表していた.(同論文は、本年度、横田正俊記念賞を受賞した)。本年度はこの論考を基礎として、複数の研究会等で批判や意見を仰いだ。中心となるのは日本経済法学会での発表である。以上から得られた知見と新たな資料収集によって、昨年公表した論考を練り直し、研究内容の豊富化と論理の精緻化を図りつつ、出版に向けた準備を進めた。2009年4月末頃に、有斐閣から本研究の成果として出版される予定である。
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