研究概要 |
1.平成19年度は、世界で最初に雇用差別禁止法を制定したアメリカにおいて、雇用差別に対し用意されている行政救済制度のあり様を通史的に明らかにすることを目標とし、文献研究を行うとともに、この分野におけるアメリカの著名な研究者を訪問し、インタビューを行いたいと考えた。 2.(1)文献研究については、アメリカの雇用差別禁止法制に関する百科事典ともいうべき、BARBARA LENDEMANN & PAUL GROSSMAN, EMPLOYMENT DISCRIMINATION LAW (3rd. ed), VOLUME 1&2,1996における行政救済手続および救済内容についての記述部分を読み込み、EEOC(雇用機会均等委員会)、司法省、労働省といった関連行政機関が、雇用差別に対する行政救済において、歴史的に(第一期クリントン政権まで)どのような役割を果たしてきたのかを明らかにした。 (2)平成20年5月に、スタンフォード大学先端研究所客員研究員(イエール大学法科大学院教授)ヴィッキー・シュルツ教授を訪問し、インタビューを行った。文献研究からは得られなかった第二期クリントン政権以降のEEOCの動向に関する情報を得ることができた。また、インタビューを通じて、EEOCが雇用差別の減少に向け与えられた権限の中で行ってきたことにつき、何が実際に効果的であったのか否かを知り得た。と同時に、効果的でなかったことをめぐっては、EEOCにいかなる権限を付与することにより、問題を克服することができるかという点についてのシュルツ教授のご意見をうかがうこともでき、有意義であった。 (3)以上を通して、日本の男女雇用機会均等法の下で行政救済を行っていく場合、行政機関にいかなる権限を付与するのが効果的であるのか、また、いかなる救済内容を担保すべきか、自分なりの意見、提案がまとまりつつある。 3.平成19年度における活字になった研究成果としては、以下に挙げる1点のみであるが、以上の研究、とりわけ、アメリカでのインタビューを踏まえた研究については、現在まとめの最中であり、近く発表したいと考えている。
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