1. 平成20年度は本研究の最終年度であるゆえ、文献研究およびヒアリング等の整理をし、まとめの執筆を進める年にしたいと考えた。以下、これまでにまとめたことの概要を示す。 (1) アメリカにおける雇用差別禁止法の下に発展した実効性確保手段につきつき、EEOCを中心とする行政機関が果たしてきた役割を、先行研究がほとんど存在しないブッシュJr. 政権時代も含め、通史的に明らかにした。 (2) アメリカでは、雇用差別禁止法成立直後から、業務量の多さゆえに機能不全に陥りがちであったEEOCの役割を補完する意味で、私人による訴訟が増加してきたが、そうした訴訟が実効性をもちえた要因はどこにあったのかを明らかにする一方で、今日、実効性が低下してきている私人による訴訟が、再び実効性を持ちうるために満たすべき条件とは何かを提示した。 (3) アメリカと日本、それぞれの雇用差別禁止法の下で確立されてきた実効性確保手段を比較し、その特徴を把握するとともに、特徴の違いが両国の法文化の違いとどう関係するのかを明らかにした。 (4) アメリカでは雇用における男女差別の問題につき、近年、法学者、社会学者、心理学者による学際的研究が盛んになっているが、日本でもこうした学際的研究が始まることに期待し、アメリカの研究の到達点を明らかにした。 2. 平成20年度においては、研究成果の公表にはいたらなかったが、書き溜めた原稿を整理・推敲し、来年度以降に出版助成を申請して、著書というにで公表したいと考えている。
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