本研究は、電気通信事業における競争評価(有効競争レビュー)について検討し、特に「市場の画定」に焦点を合わせて、新たな視点を提示することを目標に、経済法学的見地から検討を試みるものである。海外諸国の法制度及びその実態を踏まえた比較法的な研究をも行うことによって、現行法の解釈論のみならず、実態の分析に基づく法政策論も含めて研究を行うものであった。 本研究の研究調査の方法は、実証的研究、理論的研究、および比較法的研究の3部から構成された。実証的研究では、企業関係者や規制当局(総務省・公正取引委員会)などへの聞き取り調査を行うとともに、この問題の経済実態に詳しい経済学者との共同討議を行った。理論的・比較法的研究では、刻-刻変化する電気通信分野を念頭に、「競争評価」とりわけ市場画定の理論的検討を行うに当って、他の産業と異なる特性に焦点を当てて、内外の学術文献を参照しつつ、検討を行った。研究計画は、(1)研究のキックオフ、(2)研究内容の中間取りまとめに向けた整理、(3)研究の折り返し地点として、研究の方向性の総点検(4) 研究実績のとりまとめという次の4段階のスケジュールで研究の推進を図った。 一般の財とは異なる電気通信サービスの競争の「場」をどのような基準をもって画定していくのか、電気通信サービスの特性に応じた市場画定手法の本格的な検討は不十分な状態にあり、とりわけ法学的見地からの分析手法の検討は皆無といってよい状況にあった。本研究は、競争法(独占禁止法)の知見を基礎にして、有効に競争が機能しているかどうかを判断するための前提となる「市場」のとり方について、電気通信サービスの特性を念頭に置きながら、あるべき基準の解明を行った。
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