【研究実績の概要】 被害者の同意の問題に関する考察を契機に、同問題と接点をもつ必要的関与の問題である「自殺関与罪・同意殺人罪における被侵害者の行為に対する刑法的評価の問題」について検討してきたが、その過程で、生命という法益を刑法が保護していることについての意義や、それと関連する安楽死・尊厳死の問題についても改めて検討する必要が生じた。生命の質についてどう考えるかという問題についても検討対象とし、関連の学術講演にも参加し、現在も考察を継続している。これらの検討を総合し、業績として公表することを目指している。 一方、プロバイダの刑事責任の問題については、それに深く関連する法規であるとされるドイツのテレメディア法Telemediengesetz(TMG : Teledienstegesetz(TDG)から改正)の内容と、それをめぐるドイツの研究者の理解について集中的に考察することが不可欠であると考え、当該諸文献を対象に立ち入ったフォローを行った。そこでの考察は、プロバイダの行為の性格(作為か不作為か)について、そしてプロバイダにデータ削除義務を課すことの意味について判断する際、もっとも基本的な視座として役立つものと考えている。今後、私見の整理にむけて最終的な詰めの検討を進めていき、業績として公表することを目指している。 【業績の公表】 各テーマについての検討を進めるなかで、諸問題の相互の密接関連に十分配慮したうえで、各問題に対する結論を導くことが必要であると考えるに至っている。局所的な視点からの結論づけを避け、慎重に業績公表につなげたい。
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