今年度は研究開始年ということもあり、博士論文提出以降、近年のアメリカ、ドイツにおける経済犯罪に関する文献の収集を1つの目標に据え、できる限り関連する文献を収集した。本研究の第一の目標である企業の刑事責任論については、ドイツ法は否定的な立場をとっているが、この問題を正面から取り扱っている論文が2008年に入って出版されたため、その検討を行っているところである。また、企業の刑事責任について新しい刑事責任論を採用しようとしているイギリスにおけるCorporate Manslaughterに関する最新の論文の検討も行った。これらの分析成果は、次年度に発表するべく準備を進めているところである。 第二の目標である各経済犯罪の性格を検討するため、そもそも諸外国でどのような経済犯罪を処罰対象としているのか、その内容把握に努めた。経済活動自体がグローバルな範囲で行われるようになっている現在、制裁に関しても各国が統一的な対応を求められてきており(その一例として、組織犯罪に関する国際連合条約が挙げられる)、このことは、わが国に特徴的な経済犯罪があるのか、経済犯罪対策として足りない点があるのかを分析する上で有用な作業である。一例としてのマネーロンダリングについて、近年の状況を紹介している著作の分析を進めているところである。また、ライブドア、村上ファンド事件で問題となったインサイダー取引も諸外国での立法動向に影響されて、制定されたものでもあり、その動向を調査しているところである。
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