投資ファンド、特にアクティビストと呼はれるファンドの活動は、ファンドがコーポレート・ガバナンスやM&A取引にポジティブな影響とネガティブな影響をもたらしうる。ネガティブな影響を回避するための方策を、アメリカ会社法を参照し、検討した。 アメリカ会社法から示唆を得るための前提として、まず、日米の会社法の比較を行った。アメリカと日本では、会社法の重要なルールに大きな違いがあるので、理論に普遍性をもつ部分を明らかにする必要があるからである。アメリカ会社法は、司法依存モデルというべきが特徴があり、信認義務(エクイテイ)に基づき柔軟な法創造・事後的救済が可能となっている。日本の会社法は行政主導モデルというべき積極的で詳細な成文化に特徴があるが、事後的救済を図る場面においては、アメリカ会社法と機能的な類似性が認められるため、アメリカ法のポリシーを日本で実現するのはそれほど困難ではないと思われる。 ファンドの利益と一般株主・会社の利益は必ずしも一致しないので、ファンドの活動のネガティブな影響を緩和ないし除去するために、会社や一般株主の保護が必要になりうる。この問題に対処するために会社に対する株主の信認義務のような新たな法理を導入すべきとする提言もなされているが、支配株主の信認義務のような既存の法理の活用で対処すべきである。アメリカ会社法では大株主に信認義務を負わせることによって会社や少数株主の保護を図っている。事後的な救済の場面においてはアメリカと日本の会社法に機能的な類似性が認められるので、日本においても、アメリカと同様に、大株主の義務を設定し責任を課すべきである。
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