開発(探索・収集・分析など)に多くの費用がかかる場合であっても、その流通は比較的安価に行うことができ、対価を支払わない者による利用(フリーライド)を防止することは極めて困難であるという情報の性質(いわゆる公共財としての性質)に配慮して、単に、当事者間に情報格差があれば、それを平準化するという発想ではなく、情報開発者・保有者の秘匿利益にも配慮しつつ、情報へのアクセスの利益・情報利用の利益との適切な衡量のあり方を明らかにすることを目的として研究を行った。第一に、金銭や設備といった、いわゆるハードな資産だけでなく、情報・機会・能力・時間といった、いわゆるソフトな資産についても、一種の財産権を観念することによって、その帰属の保護と利用・流通の確保のバランスをとることを可能にする規律として、信認関係法理に検討を加えた。第二に、我が国における広い意味での立証責任についての議論状況を検討し、これを適切に分配することによって、当事者の情報開示を促す効果が得られるものの、柔軟性に欠けるといった限界があることを明らかにした。具体的な問題点として、情報非対称な当事者間での訴訟の他に、破産の局面での財産開示、執行の局面での規律、信託における財産の帰属者が明らかでない場合の規律などを取り扱った。その成果の一部について、研究会において2度の研究報告を行った。さらに、成果の一部として、「文献紹介岸本雄次郎著『信託制度と預り資産の倒産隔離』」信託法研究33巻(2008年)171頁以下を公表した。
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