研究課題
21年度に実施した研究の概要は以下のとおりでる。(1) 情報保有者にとって、必ずしも財産的価値のある情報の開発に対するインセンティブという視点では基礎づけられないプライバシー保護や、診療情報の問題について、アメリカ法における議論状況を参考に、検討を行った。とりわけ、インフォームドコンセントについて、押しつけの自己決定に反対する立場から、その有効性に疑問を呈する見解が主張されている一方で、提供されるべき情報の内容が裁判例によって拡張されている状況について分析を加えた。また、カルテの閲覧・開示請求を基礎づける法律構成(財産権、契約、信認関係)についても検討を加えた。(2) 他人性の判断が、法人格を手がかりとしてはできない場合(例えば、信託)について、情報の帰属(所有)、プライバシーの問題をどのように考えるべきかを、検討した。関連する研究の成果を、「信託財産の破産手続における信託債権者による権利行使と受託者による『費用前払請求権』と『費用償還請求権』の行使」財団法人トラスト60『新信託法の理論分析』(近刊予定)として公表した。(3) 民事訴訟における情報・証拠の収集・提出をめぐる規律についての議論(主張・証明責任論、主張の具体化、模索的証明、事案解明義務論など)を検討し、実体法上の情報開示をめぐる議論との比較検討を行った。その成果の一部を、「弁護士会照会ないし裁判所の調査嘱託を受けた金融機関の回答義務と義務違反の効果」潮見佳男他編『金融・消費者取引判例の分析と展開』(金判増刊1336号)として公表した。
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金融・消費者取引判例の「分析と展開(潮見佳男, 他編)(金融・商事判例増刊) 1336
ページ: 32-35