本年度は引き続き、外国法、特にアメリカ法について、不法行為一般に関する文献等にまで範囲を広げ、収集及び分析を行った。文献の収集にはかなりの労力を割くことが出来、それ故多くの文献が集まったものの、残念ながらそれら文献を十分に分析するまでには至らなかった。本研究においては、責任制限の形態が、団体-法人格のあるものには限られない-についてのものから個人についてのものへと変化していったことについて、両者にどのようなつながりがあるのか、仮につながりがあるとすれば、その背景になるものか何であったのかを明らかにすることが予てよりの課題であるものの、この点についてはなお十分な資料を以て示すことがなかなか進んでいない状況である。 他方で、外国法分析の結果をどのように日本法に還元するかという点については、さしあたり可能なところから順次行うこととした。その結果、報告書においては別項に記載しているとおり、判例批評の形で一文を公表するに至っている。尤も、この判例批評は主に不法行為の観点から考察を行ったものである。また、判例批評という形式の都合上、当該事件を超えた包括的分析についてはなお示されていない状況にある。したがって、現時点では、団体と個人との問で責任をいかに分担すべきか考察するという本研究の出発点に立ち返り、不法行為の事例にとどまらない総合的分析を加え、その成果を公表することが課題として残されているといえよう。
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