「施設契約と身体拘束」(実践成年後見26号)では、施設入所契約において身体拘束を許容する旨の合意がなされたとき、それは法律上どのような意味をもつのか、あるいは、身体拘束に対する法的規制としてどのようなものが考えられうるか、ドイツ法の状況を参考として、施設契約と身体拘束との関係について若干の検討を試みた。介護施設においては、本人を車椅子やベッドにひもで縛る、ベッドを柵で囲むなどの身体拘束の措置が実施される場合がある。従来、このような措置は、高齢者の安全確保の観点から「やむを得ない」ものと考えられてきたが、近年、このような措置は廃止されるべきとの認識が強調されている。この問題の背景潜む、マンパワーの確保や施設等インフラの整備といった財政上の限界の問題は、日独共通の問題であり、成年後見法と社会福祉・社会保障との関連について、法理論ならびに現実の諸問題にも目配りしたさらなる検討が必要となろう。 「高齢社会と成年後見」(小谷=江頭偏『高齢社会を生きる』(成文堂)所収)では、現在の成年後見制度を概観するとともに、今後の課題として、身寄りのない高齢者も制度にスムーズにアクセスできるような費用面・手続面におけるさらなる制度改善の必要性、身上監護概念を明確化するとともに、とりわけ、医療や介護の現場で現在問題となっている医療行為・強制入院・身体拘束などの強制措置についての法制度整備の必要性などについて指摘・検討した。
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