本研究は、米国著作権法の一般的な著作権制限規定である「フェア・ユース」に関する議論を題材とし、インターネットやデジタル技術が発展した現代において著作権法がどのような行為を禁止すべきかを検討し、著作権法、そのなかでも特に著作権制限規定についての解釈・立法に対する示唆を提供することを目的とする。 従来、日本著作権法における制限規定は、個別的な制限規定のみを定め、一般条項を有しておらず、著作権侵害の判断を柔軟に行えないことが問題とされてきた。このような問題意識を共有したうえで、本年度は、フェア・ユースの経済的分析による市場の失敗理論の理解を深め、関連する議論、さらには表現の自由という観点からフェア・ユースを解釈する議論を中心に、米国著作権法のフェア・ユースに関する調査を行った。その内容については、学会発表やその他論文等により公表する機会を得た。 現在、我が国においても、フェア・ユースのような一般条項的な制限規定を新たに設ける方向での法改正の動きがある。このような状況において、米国著作権法のフェア・ユースをめぐる学説や判例を紹介し、我が国における立法論への示唆を提供するという試みの重要性は増していると考えられる。実際、昨年度はこの著作権制限の一般条項に関する法改正のための調査研究会に参加する機会を得ることができた。 今後、この法改正の動きに留意しながら、引き続き、フェア・ユースおよび日本著作権法における個別の制限規定に関する調査検討を進める予定である。
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