本年度は、当初の計画通り、まず著作権法における間接侵害に関する従来の議論を再整理することにつとめた。この問題をめぐっては、当初の予想以上に学会での議論が盛んになっている。平成19年度も多数の論文が発表されており、いまや学界でもっともホットな論点になっているといってさしつかえない。本研究代表者(上野)の研究成果もすでに各所で引用されており、盛んな議論のまっただ中にあるといった印象すら受ける。今後もますます発展的な議論が予想されるところである。 本研究代表者は、こうした学界における議論に取り組むのみならず、文化庁における立法的な検討に参画している(代表的なものとして、文化審議会著作権分科会法制問題小委員会・司法救済ワーキングチーム)。そうした成果は、平成19年10月12日に文化審議会著作権分科会法制問題小委員会において「平成19年度中間まとめ」という形で公表されている。こうした審議会におけるこの問題の検討は、今後も継続されることになっており、本研究代表者はこうした形で来年度以降も立法的検討に参画する形で社会貢献を果たすことになる。 その他、この問題を含む日本法における著作権法の解説についての研究成果は、すでに英訳している。具体的には来年度中にWEST社から発行される書籍において公表される予定である。 また、本年はドイツ著作権法における「間接侵害」をめぐる議論の検討に着手した。外国法の検討だけにその成果を公表するためには今しばらくの検討を要するところではあるが、来年度以降これをまとめていき、早晩公表することになろう。
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