本年度は、当初の計画通り、ドイツ著作権法における間接侵害に関する研究を進め、ドイツ著作権法における間接侵害が、ドイツの民法上の諸法理と深く関わっていることを明らかにすることにつとめた。 もっとも、この作業を通じて、民法における物権的請求をめぐる諸問題など、果てしなく広く深い研究の蓄積に直面することとなったことはいうまでもない。したがって、これらの研究の成果を具体的なかたちで発表することは現時点ではいまだ実現できていないが、引き続き研究を続けていく所存である。 いずれにしても、本研究のテーマは、引き続き学界および実務で議論が大変に盛んになっており、しかも今後もますます発展的な議論が予想されるところである。 本研究代表者は、こうした学界における議論に取り組むのみならず、文化庁における立法的な検討に参画し(文化審議会著作権分科会法制問題小委員会・司法救済ワーキングチーム、知的財産戦略本部デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会等)。こうした審議会におけるこの問題の検討は、今後も継続されることになっており、本研究代表者はこうした形で来年度以降も社会貢献を果たす所存である。 その他、この問題を含む日本法における著作権法の解説についての研究成果を英訳したものを、昨年12月にWEST社から出版することができた。本研究のテーマである「間接侵害」をめぐるわが国の議論は国際的にも注目を集めており、わが国における諸問題の解説をこのように国際的に発信できたことは、新たな議論を生むものとして意義のあることと考えている。
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