著作権信託については、著作権法、信託法、著作権等管理事業法、信託業法の少なくともこれら4つの法律が絡み合う領域であり、それぞれの位置づけを明らかにしなければ単なる条文の機械的な比較のみに終始することになってしまう。そこで、まず時間的パースペクティブの観点からのアプローチを行っている。 これら4つの法律の制定時期を時系列的に並べると、旧著作権法→旧信託法・旧信託業法→仲分業務法→現行著作権法→著作権等管理事業法→現行信託業法→現行信託法となるが、仲介業務法の制定が著作権と信託とが接点を実際に有する時点となっている。仲介業務法制定の契機となったのが、いわゆる"プラーゲ旋風"であることは周知の通りであるが、当時、著作権法関係について所管官庁であった内務省が既存の信託法・信託業法との関係をどのように考えて立案したのかについて、資料収集ならびに分析を続けている。警保局という検閲を行っていた部局が担当しており、また昭和10年代という時勢から、私法的な観点ではなく、統制のための手段として信託を用いているという背景が伺える。 次にも現行著作権法は仲介業務法による著作権信託が約30年行われていたときに制定されており、信託を意識せずに立法がなされたはずはないが、現行著作権法には信託に関する規定はない。'しかし、資料発掘の結果、草案段階では著作権信託に関する規定があったことが判明した。結局、この規定は法案から除かれるが、その間の経緯について調査を続行し、現行著作権法の信託に対する考えを明らかにしたい。 今後はさらに、著作権等管理事業法制定の際、信託法・信託業法との関係をどのように考えていたか、また、信託業法改正の際、著作権等管理事業法についてどのように考えていたのかについても資料の調査および収集を行っていく。
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