(1) 継続研究 前年度から引き続き、著作権信託を形作る著作権法、信託法、著作権等管理事業法、信託業法の時間的パースペクティブの観点からアプローチを行たている。 これら4つの法律の制定時期を時系列的に並べると、旧著作権法→旧信託法・旧信託業法→仲介業務法→現行著作権法→著作権等管理事業法→現行信託業法→現行信託法となるが、仲介業務法の制定について、当時、著作権法関係について所管官庁であった内務省が仲介業務法を既存の信託法・信託業法と関係を切断して立案したことが明ちかになってきた。引き続き、資料収集ならびに分析を継続している。また、現行著作権法の草案では著作権信託に関する規定があったが、法案から除かれた理由については現在調査中である。 (2) 海外調査 近時、民法典に信託の規定を新たに設けたフランスおよび信託発祥の地であるイギリスに赴き、それぞれ資料調査を行った。今後、整理し、比較法的考察を行いたい。 (3) 信託業法と著作権等管理事業法との関係 現行信託法制定とともになされた信託業法の改正は、著作権信託成立自体に大きな影響を及ぼすものではなかったため、上記(1)で行たている研究とともに両業法の関係についてさらなる検討を加えている。 なお、平成21年2月27日に公正取引委員会が、著作権等管理事業者である社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)に対し、独占禁止法3条(私的独占の禁止)の規定に違反する行為を行っているとして、同法7条1項の規定に基づき排除措置命令を行った。JASRACは争う姿勢をみせており、今後に注目しつつ、著作権信託の派生問題として視野に入れて考察を行うことも検討している。
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