1 本研究は、絶対主義政治理論の特色を、古代政治学をめぐる理解や受容の様態に着目することを通じて確定するものである。研究初年度にあたる当該年度(2007年度)は、まずは、絶対主義政治理論に対する批判の系譜に着目したが、これは、絶対主義政治理論が、古代政治学を積極的に援用する政治思想に対する批判勢力として登場した、という歴史的経緯の意義・重要性を明確にするためであった。 2 当年度の具体的な分析対象は、(1)16-17世紀の立憲主義・混合体論、(2)18世紀の啓蒙期の政治思想であり、(1)についての成果が、論文「混合政体論」、「立憲主義」(そのほかに2008年度に発表予定の論文が二編)、(2)についての成果が、論文「『啓蒙の物語叙述』の政治思想」、学会発表「スコットランド史解釈と1707年」、翻訳「ヒューム『イングランド史』抄訳(5)」、および共著『はじめて学ぶ政治学』(「歴史」を分担執筆である。 3 これら-連の研究成果においては、第一に、立憲主義や共和主義(さらには暴君放伐論や抵抗権論)など、16-17世紀に絶対主義に対抗した思想潮流のあいだには緊密な相互影響がみられたこと、第二に、18世紀の啓蒙思想では一方において絶対主義・主権論の理論的成果が活用されたが(「王のテーゼ」の展開や、いわゆる啓蒙専制君主論)、他方においては、政治共同体の歴史的転換を追跡する歴史学的・歴史叙述的手法を通じて、啓蒙期の政治思想が同時に、絶対主義・主権論の理論的成果を克服ないし発展させる営為であったこと、が解明された。こうした成果を利用して、2008年度は、16世紀ヨーロッパ大陸での絶対主義思想、およびイギリスでのその受容について分析をおこなう。
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