本研究は、ヨーロッパの絶対主義政治理論における、古代ギリシア・ローマ世界の政治学の継受の様態を解明するものである。これは、初期近代の政治思想史における古代の政治学の影響を確定する研究の一環をなすものであり、本研究では、前期ステュアート期イングランドの思想家を中心にして、絶対主義政治理論における古代政治学に対する理解・応答の様態を明らかにする。具体的な分析の中心は、絶対主義政治理論を提唱した思想家が、みずからの絶対主義理論を提示するにあたり、古代の政治学をどのように取り扱ったか--誰のどのテクストのどの箇所を取捨選択し、それをどのように理解・解釈し、自らの主張との関連においてどのような態度(利用・読み替え・批判・無視)を採ったか--を、テクストに明示された言及・典拠を直接の手がかりにして解明することである。本研究課題は、以上の方法を通じて、初期近代における絶対主義や主権論の思想史的位置づけを行うことを最終目的とする。
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