平成21年度科学研究費補助金交付申請書に記載した研究実施計画の通り、(1) 日本における政党支持概念の歴史的形成過程の研究、(2) 現在の日本における政党支持概念の研究、(3) 各国における政党支持(政党帰属意識・近接政党)の投票行動に対する影響力の比較研究、の3点について研究を行った。 (1) については、当初に計画していた男子普選実施期よりも遡って、新聞や政党機関誌等に見られる明治初期からの「支持」概念の変遷を分析し、普選導入期に加えて日清・日露戦争や第一次世界大戦が「支持」概念の外延を広げる契機になっていることを発見した。本件については第1稿がまとまっているので、平成22年度において学会発表を行うなど、公刊に向けた具体的プロセスに入りたい。 (2) については、平成21年8月30日の衆議院議員総選挙時の世論調査データを利用して、有権者の政党支持概念理解に関する2本の論文を刊行した。その結果、有権者がイメージする政党支持の意味内容は実に多様であり、それは支持政党によっても特色が見られ、また従来のものに加えて長期的安定性を強調したもの、投票予定政党と解釈したものを併用して支持政党を計測すると、分布に大きな差が見られること等を明らかにすることができた。 (3) については、政党支持の規定要因に関する経済学的アプローチに基づく考え方について、CSESデータを用いて再検討を試みている。まだ研究成果を世に問う段階には至らないが、平成22年度においてさらに分析を進める予定である。 上記のほか、支持政党とメディアの関係についての英語論文がすでに査読をクリアしており、平成22年度中に刊行される予定である。
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