平成22年度科学研究費補助金交付申請書に記載した研究実施計画の通り、(1)日本における政党支持概念の歴史的形成過程の研究、(2)現在の日本における政党支持概念の研究、(3)各国における政党支持(政党帰属意識・近接政党)の投票行動に対する影響力の比較研究、の3点について研究を行った。 とくに本年度において中心となったのは(2)であり、2010年参議院選挙時に行われた世論調査データを基にして、有権者がイメージする政党支持概念の意味内容は多様であることや、支持政党によって同概念理解の特色が見られること、および計測法の違いによって支持政党分布には大きな差異が見られること等を明らかにした。さらに、従来の政治党支持概念の代わりとなりうる党派性指標--投票予定政党、感情温度最高政党、長期的に○○党寄りなど--を検討した。 これらの分析結果を踏まえて、党派性の計測法如何では、従来型の政党支持指標よりも無党派層が少なくなったり、安定度が高くなったりと、これまでと相貌を変える場合もあり、従来「ワイルド・カード」として使われてきた政党支持概念を、より外延が小さくなるように--例えば、オリジナルな政党帰属意識などの基底的態度のレベルや、投票意図のような政治的行動に近いレベルに--「因子分解」する必要性を主張した。以上の成果は、すでに公表されている論文「政党支持概念に関する一考察」に加えて、より詳細なものとして論文「政党支持概念をめぐって」を執筆のうえ、日本政治学会研究大会において発表された。
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