研究概要 |
本研究は,主に予防接種行政を事例として,社会的なリスクに関する制度設計から制度運用に至る,国-自治体を含めた各段階における行政組織において,いかにリスク認識がなされているのかを探り,重層的なリスク管理の手法と戦略を分析しようとするものである。研究手法としては,文献調査・行政資料調査・インタビュー実態調査の3つを並行して進める計画としている。 第一年度である平成19年度は,まず制度全体の歴史的変遷の把握を目的とし,文献調査と資料調査を中心に実施した。 第1に,文献調査の対象としては,(1)準備作業の一環として,予防接種法とその前身である種痘法について,関連するもの,(2)医学雑誌等に掲載された医師や保健師らによる実態報告・研究報告に類するもの,(3)被害者や弁護士らによって編纂された予防接種禍訴訟記録,といったものを広汎に収集・分析した。第2に,行政資料として,厚生労働省に対し,情報公開請求を行うとともに,国立公文書館に所蔵されている法令審査資料を用い,分析を行った。第3に,行政実態の把握のため,自治体での接種担当者に対しインタビュー調査を実施した。 以上の作業によって,予防接種行政全体の大まかな見取図に加え,感染症予防と副作用防止という相反するリスクが規定する行政実態について理解することができた。
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