本研究課題の2年目となる本年度は、年度初めにアメリカ中西部政治学会にて連邦準備制度理事会(FRB)の成立過程に関する報告を行い、有益なフィードバックが得られた。それも生かしつつ研究全体の進め方を修正し、行政国家化が進んだとされる20世紀においても、裁判所をベースにもつ初期アメリカ国家以来の国家形成の伝統が存続し、官僚制と行政委員会をそれぞれ柱とするいわば2系統の行政国家が発達したという見方から分析を進めた。その結果を暫定的にまとめ、10月の政治学会年次大会で「アメリカ行政国家における司法の領分」という題目で発表したが、概ね良好な反応が得られた。またそれによって、19世紀末の州際通商委員会(ICC)の設置を始点とする本研究について、1946年の行政手続法の制定を時期的な区切りとする方針がほぼ確定した。 他方、この間にも精力的に史料調査を進めたが、対象の幅広さに苦しめられている。8月にシアトル、2009年3月にニューヨークで調査を行ったものの、とくに連邦取引委員会(FTC)の設置過程には、多くの利益団体が関与しそれぞれがまとまった史料を残しているため、それらを精査するのにかなりの時間をとられた。ただし、上述のように行政委員会に対する司法の影響にある程度焦点を絞れるようになったため、行政事件を扱った当時の裁判例や、初期の行政法学者による研究といった、新しい種類の史料の収集および分析に着手した。次年度にはまとまった成果が出せるものと考えている。
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