本研究の目的は、戦後日本の政策決定過程において、選挙制度と二院制度が首相の指導力にどのような影響を及ぼしてきたか、理論的、実証的に分析することにある。この目的を達成するために 19年度は次のことを行った。 初年度は、特に首相と参議院の関係を分析することに重点を置いた。このため、内閣毎に、内閣提出法案に対して参議院がどのような影響を及ぼしたのか、また、首相が与党参議院議員からどのような形で協力を獲得してきたのか定性的に把握することに努めた。この中では、これまでの研究であまり注目されていなかった吉田内閣期の内閣と参議院の関係を解明し、参議院において吉田内閣は重要法案の修正を余儀なくされることが多く、場合によっては法案成立そのものを断念しなくてはならないことがあったことを明らかにした。また、吉田首相が参議院における与党勢力の拡大に努めただけでなく、衆議院において再議決を可能にするための与党勢力の確保することを試みたことも明らかにした。 この他、中選挙区制度が首相の指導力に及ぼした影響を明らかにするために、首相の強い指導力の下におかれた閣僚の確定を始めたほか、8大派閥が5大派閥に変遷していく過程を把握することに努め、首相の指導力は派閥の数に左右されるという仮説を立てた。また、内閣官房が変容していくことの歴史的経緯を把握することも開始した。 また、分析に役立つ議院内閣制のもとにおける首相の指導力のあり方についての先行研究や二院制が政治過程におよぼす影響を分析する先行研究の理解に努めた。
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