本年度は、「知識の政治」という分析枠組みの検討を行った上で、わが国と英国の航空輸送産業における規制改革の政策過程に関する分析を行い、更に政策過程論へのインプリケーションを検討した。 航空規制改革過程に関しては、大きく、(1)競争政策への政策転換、(2)競争政策への政策転換後の政策展開、という2つの段階に区分し、分析を行った。まず、「政策知識」という観点から、個別政策内容を規定する政策理論について、競合可能性理論、インセンティブ規制理論、空港発着枠入札理論について検討した。そしてその政策知識に関して、わが国では、知識の推進者となった「認識コミュニティ」とその知識の「経路」の変容を分析し、英国に関しては、現地資料等をもとに、「強制的圧力」という観点から90年代のEUの動向及びその影響について分析した。更に、双方の事例の分析結果をもとに、(1)規制の状況、(2)競争促進の政策的枠組み、(3)規制機関の制度的位置付け、(4)規制機関と産業との関係、という点から比較分析を行い、政策オプションの選択に影響を及ぼす要因について考察し、政策知識と政策形成・変容との因果メカニズムへのインプリケーションを検討した。 研究成果の一部は『公共政策研究(日本公共政策学会年報)』に「知識と政策転換 : 第二次航空規制改革における「知識の政治」」として掲載された。また、日本公共政策学会で、「わが国における規制緩和の制度設計と政策パフォーマンス」として研究報告を行った。これらの成果報告によって、「知識の政治」という分析枠組みの有用性が広く認識されることとなったと思われる。
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