本研究の目的は、議院内閣制を採用する英連邦諸国との比較のうえに、戦後日英両国の政府内調整メカニズムの発達過程を解明することにあった。急激に変化する政治環境のなかで、議院内閣制下の政府内調整メカニズムと首相職が十分な対応能力を持っているのか、他方で議院内閣制の中心に位置する首相が行使する権力をどのようにコントロールできるのかを検討することは、実証研究としても現実的有意性という観点からも重要な課題である。本研究は、政党政治のダイナミズムと政府内調整メカニズムの特徴を結びつけることで、当該分野の理論的な発展にも貢献することを目指した。これにより、行政学の一分野とも位置づけられる政府内調整の研究と政治学の関心領域である政党(組織)論の融合を図り、首相を中心とする政府内調整メカニズムのあり方に対する、より包括的な理解を促すことを試みた。本年度は、比較分析の対象国であるオーストラリアとニュージーランド、英国においてフィールドワークを行った。また、アメリカ政治学に関する文献の渉猟のためにアメリカ合衆国での調査も実施した。日本側の資料に関しても、情報公開法の制定を受け、特に、外交史・国際関係史研究で活用されるようになった日本の外交文書・公文書に関して情報公開請求を行った。本研究は、単著『首相の権力-日英比較からみる政権党とのダイナミズム』をはじめとして、発表された。さらに本研究の成果は、2009年の日本比較政治学会と日本政治学会でも発表される予定である。
|