本研究は、明治政治思想史を「法」ないしは「法秩序」という視点から捉え直し、明治時代の秩序論の位相を明らかにすることを目的としている。これは、リチャード.H.マイニアが「驚くべきことに、日本の伝統思想と西洋法思想の基本的な哲学的対決を論じたものは殆どない」(「西周の法概念論」『法哲学年報』(一九七〇年))と指摘して以来、依然として積み残され続けてきた課題に応えるものでもある。特に、明治前期に活躍し、「功利主義」的政治観を共有していた福澤諭吉と西周、両名の思想を中心的な考察対象とし、彼らの「法」理解と「功利主義」的な政治観との連関を解明するということが、当初からの研究計画である。
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