本研究の目的は、冷戦後の日本におけるナショナリズムの強弱や変動を計量的に説明しようとするものである。近代民主主義国家において、「民族・国民」と「国家」の繋がりは既に形成されているため、ナショナリズム自体が、既存の繋がりを再確認する過程もしくは、新たな繋がりを作る過程となる。本研究では、この繋がりを形成するための手段として主に政治家が使用する「ナショナル・ナラティヴ」(国家形成や国家像などに関する逸話)に焦点を絞り、ナショナリズムを幾つかの「ナショナル・ナラティヴ」に分類し、冷戦後の日本のナショナリズムがどのような変化を遂げたかを明らかにしていく。研究方法として、戦後日本史に最も顕著で継続性があると思われる「ナショナル・ナラティヴ」を選定し、コーディング・マニュアルを作成し、戦後日本の総理大臣の演説、さらにそれらに関連した野党代表演説や新聞社説のデータ化を終了。量的内容分析を実施するため、研究支援者をコーダーとして起用し、上記コーディング・マニュアルに定めたコーディング方法を習得させ、データ内の「ナショナル・ナラティヴ」をコーディングし、コーダー問の信頼性を検証しながら、昨年度までに一部のデータをコーディングした。本年度から、コーダー間の信頼性の高いコードを選出し、データのコーディングを継続した。研究成果として、1)コーディング・マニュアルの作成、2)演説と社説のデータベース化、3)データのコーディング結果などがあげられる。今後、コーディング結果を分析し、冷戦後の日本のナショナリズムがどのような変化を遂げたかを明らかにし、論文にまとめる。
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