平成19年度にはまず、援助行政における政府の責任の強化が、民間企業とりわけコンサルティング企業のあり方を変えたのかを同定すべく、データの収集を行った。海外コンサルティング企業協会(東京)に電話での聞き取りを行ったところ、国際建設技術協会(東京)の方が多くのデータを持っていることが判明したため、当該協会から当該協会に所属するコンサルティング企業が1990年代2000年代にどの地域で活動してきたかに関するデータを入手した。しかしながら、全体として件数が少ないために、援助行政の変化とコンサルティング企業の活動のプライオリティーの間に相関関係を確認することは困難であった。そこで、事例研究として、中華人民共和国を選び、国際協力機構(JICA)や国際協力プラザ(APIC)への出張を通じて、様々なデータを収集した。国別援助計画に見られる様な外交における政府機構の変化に加えて、2001年以降の官邸機能の強化が、民間企業の援助行政に対する姿勢を変えつつあることが判明した。それと同時に、官民の関係が議院内閣制と大統領制で大きく変わらないことも明らかとなった。こうした一連の作業の成果の一部を「11」記載の論文として発表予定である(掲載は決定しているが巻数・最初と最後のページ数は未定)。 19年度には上記の作業と並行して、政府の責任に関する文献を収集し講読した。行政に期待されるサービスの専門性が高まる程に、政策実施の責任と政策策定の責任のディレンマが大きくなるにもかかわらず、先行研究がその点に深く言及していない事が分かった。政府のディレンマという観点から見た場合、援助行政も他の公共政策と同じ土俵で論じられるというヒントを得た。
|