政府(ヒエラルキー)でも市場(マーケット)でもない統治(ガバナンス)の方法、つまり「ネットワークによるガバナンス」を分析する研究者(特に英国やオランダの学者)は、政策実施の責任と政策調整(策定)の責任を暗黙裡に区別し、多様な主体か照構成されるネットワークに政策実施を委ねても、政府が調整する責任は残ると暗黙裡に考えている。当該年度の研究においては、アメリカ型の連邦制やEUを除けば、政策実施に携わるネットワークの調整では政府(ヒエラルキー)の役割が高まると明示的に仮説を立て、聞き取り(理論的整合性に関して)と量的研究により検証を行った。 1. 聞き取り :「ネットワークによるガバナンス」の第一人者であるピッツバーグ大学のピーターズ教授と頻繁に連絡をとり、私見に関するコメントを求めたが、概ね異論はない様であった。また、公共政策学会各セッションでの報告や質疑応答か照も研究者の仮説が誤りではないとの印象を持った。 2. 量的研究 : 先行研究では日本のコンサルティング企業が援助行政に与える影響が大きく取り上げ照れてきた。しかし、「国民参加型援助」の様に国内の多様な行為者を援助行政に参加させる時代にあっては、政府の調整能力が却って注目され、先行研究とは逆に援助行政がコンサルタントの行動原理に影響を与えることが予想される。国建協のデータをもとに分析を行った結果、その予想が正しいとの結論が得られた。また、日本のNGOに関しても、政策実施における役割に比べて政策策定段階の役割が相対的に小さい可能性が示された。これらは次年度以降に論文として公表される予定である。 日本の援助行政のこうした変化は、オランダの教育政策や福祉政策、英国の社会政策などと共通であり、日本の援助行政が特殊だとする先行研究に異を唱えるものである。
|