研究概要 |
国際政治の新しい理論的潮流,たとえば,規範,認識的側面を重視するコンストラクティビズム,およびグローバリズムとパラレルに生じつつある地域主義(リージョナリズム)をめぐる近年の諸議論等を援用し,信頼醸成措置を国際安全保障のキー概念として再構築を試みる作業を行った。とくに信頼醸成措置の発展過程を「軍事的透明化」と「認識共有」の二重プロセスとして理解すること,そして,それらが地域安全保障枠組みの形成と密接な関係にあることを検証し,OSCEプロセスの再検討を基軸としながらも,欧州という地域的特性,冷戦という時代背景をこえて,国際安全保障研究の新たな方向性につながる可能性を検討した。 具体的には,国際安全保障における地域枠組みの現状とその最新の研究状況について,最新の研究書,内外専門雑誌を中心に,資料の収集/整理,情報交換等を行った。なかでも,regional security complex概念の検討を進めた。また,信頼醸成措置の歴史的展開とその再評価の現状,および今日的意義について検証した。OSCEプロセス(1975〜)を,とくに冷戦期の展開を中心に,地域枠組み,および信頼醸成措置の観点から,多角的かつ詳細に再検討した。 さらにそれらを敷衍し,海外出張での現地調査,研究者のみならず実務家との研究会合やそこでの報告,議論などを通し,越境的問題(すなわち,「国家」の機能の現代的意味の批判的分析)や外交政策的な視点からの検討が本研究の進展に必要であることを新たに確認し,今後の研究に重要なインプリケーションを得た。そのような研究の成果の一部として,2つの論考を著し,また,次年度につながる研究会合等の計画を立案した。
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