20年度は、国際安全保障における地域枠組みの検討、およびそこにおける信頼醸成措置の現代的意義に重点を置き研究を展開した。また、これらを理論的に補強するために、(日本ではほとんど研究が展開されていない)地域安全保障複合体(RSC)概念の検討を進めた。具体的には、アジア経済研究所で関連テーマの研究グループに参加し、南米、アフリカ、東南アジア、中央アジア等の各地域の安全保障地域枠組みの比較検討を各専門家との議論を通して精緻化、そこから抽出される、現代世界における安全保障地域枠組みの意義と展望について、既存の議論にとらわれない発想の研究を展開した。また、中国出張での現地研究者との対話を通して東アジアでの地域枠組みの現状と展望、関連する各国外交政策、およびそこにおける信頼醸成措置の意味合いについて研究を進めた。科研費出張では、同テーマに関して米国でのインタビュー、また北欧とくにコペンハーゲンでは、地域安全保障複合体(RSC)概念について第一人者に聴き取り、意見交換を行った。同概念については、本研究における重要性を再確認し、RCS関連の理論について、B・ブザンなどコペンハーゲンスクールを中心に先行研究の包括的レビューをまとめた。さらに並行して、国際安全保障、国際関係論において、その根底をなす主権国家概念の歴史的、理論的検討と現代的解釈の検証を行い、中間成果を日本政治学会で報告し、現在も論文発表へ向けた研究を継続している。
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