21年度は最終年度として、「信頼醸成措置の普遍的理解は可能か(妥当か)」との問題意識を背景に、国際政治の新しい理論的潮流、とくに規範、認識的側面を重視するコンストラクティビズム、およびグローバリズムとパラレルに生じつつある地域主義(リージョナリズム)をめぐる近年の諸議論等を援用し、信頼醸成措置を国際安全保障のキー概念として再構築に取り組んだ。具体的には、OSCEプロセスの理論的検証を、地域枠組みと信頼醸成措置の観点からさらにすすめるともに、他地域での地域安全保障枠組み構築を比較事例として検証した。また、信頼醸成措置概念の、ポスト冷戦後期の国際政治における理論ツールとしての有用性などを分析した。関連して、国際安全保障に関する諸議論、とくに近年の、地域枠組みと国家の役割をめぐる新たな理論動向について検討を進めた。具体的には、地域安全保障複合体(RSC)概念や近年提起されている安全保障アーキテクチャ論などを中心に、その概念的整理と批判的考察、および、とくに日本周辺地域の国際安全保障における、それら諸概念の適用妥当性を、アメリカ、欧州、豪州等の最新の研究動向をふまえつつ検討した。これらの作業により、冷戦期とくに欧州地域安全保障のなかで提起された信頼醸成措置概念について、その時代的、地域的特異性を超えた理解の基盤を形成し、現代国際関係における意義を確認するとともに、その具体的な応用の展望について、いくつかの重要な知見を獲得することができた。
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