平成20年度の研究は、米国における史料調査を実施すると同時に、19年度の現地調査で収集した一次史料の分析に努めた。1月から2月にかけ、テキサス州オースティンのジョンソン大統領図書館、ワシントンの国立公文書館、ボストンのケネディ大統領図書館を訪問し、ドイツに対する政策の解明に努めた。また、すでに収集した史料の電子、文書化をほぼ終了し、史料の分析に着手している。 これらの史料から、多国籍核戦力(MLF)に関するケネディ政権の対応には、依然として不透明な部分が多いことが明らかとなった。これに対してジョンソン政権では、早い段階でMLFへの関心は失われている。先行研究では、ケネディ政権の対応に関して意見が分裂しており、本研究がこの点を解明できれば、米国の核兵器不拡散政策および対西独政策に関する新たな知見を得る可能性がある。またジョンソン政権については、現在有力な研究の結論を確認したのが現状であるが、新たな問題を探りつつ史料分析を進めていく予定である。 さらに20年度は、19年度に行った研究で得られた知見と、これまでのアイゼンハワー政権に関する研究を総合して、『アイゼンハワー政権と西ドイツ-同盟政策としての東西軍備管交渉』をミネルヴァ書房から出版した。本著は20年度国際政治学会研究大会の分科会にて書評にも取り上げられ、本研究にも関連する貴重なご教授をいただいた。
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